青山で店を出すなら、リノベーションもしたくない
「ちなみに、原宿エリアには大人になるまであまり足を踏み入れなかったので詳しくないんです。青山通りから表参道に入ると途中に『KIDDY LAND』があったのですが、それより先は怖いと思っていました。国立競技場は小さい頃、親と一緒によく見に行きましたけどね。石垣の大きさや外灯のすっきりとしたデザインなど、ひとつひとつのパーツを見て『すべて欲しい』と思っていました(笑)」
青山エリアは幼い頃からホームだったにも関わらず、原宿エリアは大人になるまで怖かったと語る遠山氏
幼き頃から、その目の付け所は他の子供たちとは少し違ったのであろう。そんな遠山氏に、今後青山でしたいことを聞いてみると。
「いま、私が新しく店を出すとしたら、60年・70年代から残っている歴史のある場所を選びたいですね。リノベーションすることもなく、当時の魅力が残った状態でそのまま使いたい。たとえば、私は『ブラック青山』に昔から憧れています。螺旋階段が見える外観、中二階・半地下が重なる内部など、不思議な世界観に惹かれていて。若い頃、いつかあのビルの上にあるバーでお酒を飲みたいと思っていたのに、いつの間にかなくなってしまっていました。なので『きっとこんなバーなんだろうな』と当時妄想して思い描いていたバーを、自分で再現したいですね。あ、変えたい点を強いて挙げるとしたら、青山通りの並木。表参道には立派なけやき並木がありますよね。たとえば、青山を愛する人たちがひとり1本ずつ木を植えていく。時間をかけながらで良いので、青山にも美しい並木ができれば嬉しいですね」
1971年に建てられ現在も残る『ブラック青山』。遠山氏がいつかバーをオープンする可能性も?
遠山氏にとって青山とは、世代を超えて伝えるべき魅力が詰まった街なのだ。青山というエリアが誇るべきものは、どうやら”高級感”ではなく、"本物を愛する精神"であるようだ。
Text:Takeshi Koh(OMOHARAREAL編集長)
Photo:Takako Iimoto