新たな価値観を受け入れ、広める街
H.P.FRANCEは、オモハラエリアを中心にどんどんと店舗数を増やし、現在は国内外に約80店舗を構える企業となっている。その成功の要因として、この街でスタートしたことが大きいという。
「クリエイティブなものに対する、女性の理解力の高さには救われましたね。H.P.FRANCEがやろうとしていることを面白がって集まってくれる前衛的なクリエイターはいましたが、それが日本で受け入れてもらえるかは正直不安だった。でも、原宿に訪れる女性たちの、新しい物や価値観を自分のスタイルに溶け込ませる感性は世界一なんですよね。彼女たちは、金や宝石のサイズよりもクリエイションを重視するという価値観をすぐに受け入れてくれました。それは、時代が変わった今でも同じで、原宿の若い女性たちは既存の価値基準の外にあるものを抵抗せずに吸収して、新たなスタイルを築き上げ続けています」
オモハラを拠点として、柔軟な感性を持つ日本の若い女性たちに新たなスタイルを与えた村松氏。実は現在も、このエリアから新たな価値観を発信するプロジェクトを進行している。H.P.FRANCEが名付けた「青参道」(青山通りと表参道を繋ぐ裏道。この路地には多くのH.P.FRANCE系列店舗が存在する)で毎年秋に行なわれているアートイベント「青参道アートフェア」である。
青山通りと表参道を繋ぐ「青参道」。村松氏はこの道の名付け親であり、ここでは毎秋「青参道アートフェア」が開催される
「海外に比べ、日本はアートの敷居が高いですよね。アートはもっと気軽に楽しめるもので、日常生活の中に溶け込んでいて良いもの。アート感のあるライフスタイルやアート市場を日本で作ることが、原宿とフランスの感覚をルーツに持つH.P.FRANCEの大命題だと考えています。表参道・原宿にいる若い人たちなら、我々の想いを吸収し、日本に浸透させてくれると期待しています」
「H.P.(=原宿プロジェクト)」の名を背負い、常に新しい何かを世に投げかけようとしているこの仕掛け人からは、このエリアの人々に対する信頼が滲んでいる。