革命が終わらない街
表参道と原宿。このふたつの街を、ファッションのジャンルだけで区別しようとすることは、その本質を取り逃すことに等しい。見るべきポイントは、文化のベクトルの向きである。前述の通り、原宿のカルチャーの根底にあるのは、すぐそばにあったアメリカに対する憧れと嫉妬であり、その感情をエンジンに、市民が自らの手で新しいものを生み出そうとする、ある種のアナーキズムである。正反対に、表参道はブランドという大きなパワーが次の流行を規定し、新しい文化を提示していく。ボトムアップとトップダウン。この180度逆向きのふたつのベクトルは、互いに打ち消しあうのではなく、V字谷の傾斜を利用しながら微かにその軸をズラすことで、大きな回転運動を生む。回転は、英語で“Revolution”。つまり、革命だ。
表参道と原宿。正反対の街が隣り合わせることで生まれるエネルギーがある
表参道と原宿は、常に互いに小さな革命を起こし続けることで、新陳代謝を促し、街に命を吹き込んできた。そして回転は螺旋へと発展し、今後も大いなる台風の目として、東京のカルチャーを動かし続けることだろうと思う。趣のある風景が失われていくことを嘆くひともいるだろう。しかし、このメタボリズムが止まった瞬間、この街は生気を失うかもしれない。なにも恐れる必要はない。ここは、まっさらなスクリーンだったのだ。街自体が、時代という目まぐるしい物語を投影した映画なのである。そのメガホンを握るのは、これまでも、これからも、私たちだ。
《プロフィール》
各務太郎 Taro Kagami
1987年東京都生まれ。2011年早稲田大学建築学科卒業後、電通に入社。第1クリエーティブ局配属。コピーライターとして数々のCM企画を担当。2014年退社。2015年ハーバード大学デザイン大学院(都市計画学修士)に入学。現在、建築と広告、2つのアプローチで都市が抱える難題に取り組んでいる。第30回読売広告大賞最優秀賞。第4回大東建託主宰賃貸住宅コンペ受賞。他。